愛されオーラに包まれて
ひとつ息をついて、正面を見た副社長。

『俺の目が届く、営業局内で勤務すること』

この一言で、フロア内が一斉にざわつき、あるひとつの結論にたどり着いた。

私も同じく、結論が出て、向かいの泰河と目を合わせ、2人で私の隣にいる人物を見た。

「玲奈、さん?」

すると、玲奈さんはその場で立ち上がった。

『そう。皆さんがお察しの通り、俺が今話してきた"一目惚れの女の子"とは、今、そこに立ち上がった本日の主役、金澤玲奈のことだ』

私は開いた口が塞がらなかった。

本当に驚くと声は出ないものなんだなということを思い知った。
つまり、玲奈さんは、副社長の、奥さん・・・ってことだよね?

しかも5年も前に結婚しているということでしょ?
泰河と目を合わせて驚きを共有している。

『今日まで、営業局のみんなには、妻がお世話になりました。そのお礼をしたくて、俺はこの場をお借りした。長くなって申し訳なかった』

副社長は締めようとしているけど、私にはひとつの疑問があった。

「あの・・・」

静けさを取り戻した会場で、私の声は響いた。

『どうした?高松』

手を挙げていた私は、それを下げた。
< 323 / 345 >

この作品をシェア

pagetop