愛されオーラに包まれて
『営業局では、知っている人はいたのか?』

泰河は同期として全く知らなかったのが解せないみたい。

『局内で知っていたのは副社長以外では、日下部長だけ』

さすがに直属の上司は知らないとマズいよね。

「だから、毎日早く帰らなければならなかったんですね。茉莉ちゃんを迎えに行かなきゃならないから」
『そうなの。だからみんなに嘘をついてることになって、申し訳なくて。だから仕事だけでも一生懸命頑張ろうと思ってさぁ』

そこが、玲奈さんの仕事のバロメーターだったんだね。

「こういう、パパもママも夜遅くまで出てきている日は、茉莉ちゃんはどうしているんですか?」
『今日は私の両親が見てくれているの。うち、私の実家の裏に住んでいるから。成瀬川家の次男が、うちにまるで婿養子の状態』

そう言って玲奈さんは笑った。

私と、駆け付けた同期一同から花束を手渡し、衝撃だった送別会は終了した。

今日は月曜日。

無理はできないと、みんな帰路につく。

私と泰河も帰宅した。

『何だか、驚いたけど、俺の中では納得した』
「どういう風に?」

私は、ジャケットをハンガーに掛けながら泰河と話す。
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