愛されオーラに包まれて
『桐生くん、今日は調子悪いの?』
「え?」

金澤から言われて心当たりのあった俺は、返す言葉がなかった。

『だって、今日ほとんど話してなかったじゃん。私が止めなかったらどんどん明らかに売れない企画も通されちゃうところだったよ』
「ごめん」
『何があったか知らないけど、ファイトだよ』

いつものポーズだ。片手は箸持ったままだけどね。

「なぁ、金澤」
『なぁに?』
「やっぱり女って、好きでもない男に抱かれたら、その場では同意したとしても後で傷つくか?」

"ゲホっ、ゲホっ"と金澤がむせた。

『ちょっと、何言い出すかと思えば、まだ日が高い時間に』
「俺は真剣なんだよ。女心を知りたいの」
『あ、そう。うーん、経験値にもよるんじゃない?男性経験がたくさんあるならその中の1回は大したことないだろうけど、経験ない人は、ショックかもよぉ。あ、もしかして桐生くん、それで今日おかしかったの?』

うわっ、図星つかれた。

「情けないよな…」
『もしかして、歓迎会の時、何かあった?』

やっぱり勘が鋭いな、金澤。さすが営業局のエースだな。

「詮索すんなよ」

俺は金澤にそう言うのが精一杯だった。
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