愛されオーラに包まれて
『わぁい、撮ろう!』

玲奈さんは副社長の腕をまた引っ張って、私達の背後に回った。

『副社長、写真は苦手でしたっけ?』

あまり乗り気じゃなさそうに見える副社長に気を使う泰河。

『いや、苦手じゃないけど、玲奈と一緒に公に行動すること自体に慣れてなくて、ちょっと照れがあるだけ』

そうか。
今まで、秘密の恋愛に秘密の結婚の生活を送っていたんだもん。

"秘密にすること"に慣れちゃってて、いざ堂々とできる環境になってみると、照れちゃうわけか。

「慣れましょうよ、これから」
『うん。そうだね』

玲奈さんは大きな目を半分くらいにして笑った。

『来週は1週間休みだろ?その後からは、日中の奥様のことは俺にお任せください』

副社長は泰河に向かって言う。

『すみません。1週間、秘書不在は大変ですよね』

泰河も申し訳なさそうな顔をする。

私達は明日から1週間、フランスへ新婚旅行に行く。

『気にするな』
『いいないいな。私も健吾と旅行にいきたーい』

玲奈さんは、おねだりするような素振りで副社長に言う。

『お前はもう行っただろ?ドイツ』
『何回でも行きたいもん』

この夫婦はこんな会話が普通なんだろうけど、私には到底違和感だ。

でも、私は副社長の秘書。
うーん、馴れなくちゃ。
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