愛されオーラに包まれて
すると石井くんが、

『校了後の直しは、搬入遅延の原因になります。な、大熊』

一部の大熊くんへ明らかな意味深口調で振った。

『それ、シャレにならないから。今週も大変だったんだぞ【週刊速報】』

"アハハハ"と笑う一同。

大熊くんは時事ネタを扱う週刊誌を担当しているから、大変だ。

『桐生さん、今は長崎のお守りで大変ですよね』

三部の磯部くんが言う。

『まぁ、去年の清水よりは全然楽だけどな』

みんなの会話を聞いていると、自分が段々浦島太郎のようになって行くのかな、と寂しく感じてしまった。

今年の新入社員である長崎さんとは会話すらしたことない。

少し、嫉妬。
でもいちいち嫉妬していてもキリがない。

『高松こそ、どうなんだよ、秘書』
『俺達なんて8F南のフロアすら足を踏み入れたことないぞ』
『想像つかないよね』

口々に話す同期たち。

「まぁ、ずっと一緒に仕事していた副社長だし、安心してお供させていただいているよ」
『まぁ、桐生さんがヤキモチ焼かない程度に、頑張ってね』

最後に朱里がそう言って、同期集団は離れて行った。
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