愛されオーラに包まれて
「"あなたより自分がやった方がこの仕事はスムーズに出来る"と自惚れて、人の仕事を奪ってやってしまったら、いくら金澤の能力が高くても取られちゃった側からすれば、面白いわけないだろ?」
『そうですね…』
「だから、金澤はお前に譲って、お前を育てる意味でも、また、自分を守る意味でも、そう判断したんだよ」

これで合ってるよな、金澤。

『でも、何故遠藤部長からこの話になるんですか?』
「遠藤部長にも、金澤のようなポテンシャルが少しでもあればいいのにな、って思っただけ」

でも、俺らはサラリーマン。
上司の言動は絶対だからな。

『あの…桐生さん』
「ん?」

俺はパンをひと口かじった直後だ。

『桐生さんって、玲奈さんのことが好きなんですか?』
「は?」

何でそうなる?
コイツにははっきり言わないと伝わらないのか。

「金澤は、同期で最大のライバルだよ。営業局のエースの名を欲しいままにしてるだろ?俺だって、頑張らなきゃって思えるカンフル剤。それ以上の感情は皆無」
『そう言うもんなんですかね』

高松もパンをかじった。

「お前こそ、局長のことが好きなんじゃないのかよ」

本当はこんな質問はしたくない。
だけど、あえてえぐりだして、彼女の心の本音を見ないと、俺も前に進めない。
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