愛されオーラに包まれて
『そろそろ、俺が話してもいいか?』
「は、はい!」

桐生さんは真っ直ぐ、私の目を見た。

『まず、お前を妹とか子供とか、そう感じたことは一度もない。後輩と思ったのが最初の3日間くらい。あとは、俺にとってお前は、常に"女"だよ』

「桐生さん…」

『そして、先週のことは、俺の中では後悔しか残らなかった。お前と同じ気持ちで"簡単に誰とでもセックスできる男"と思われてしまっただろうなって』

桐生さんはそう言うと私から目を逸らして、俯いた。

『でも、今までのお前の彼氏とは、決定的に違うところがある』

再び桐生さんは顔を見上げた。

『あの時、お前がいくら泥酔状態であろうが俺に対して心がなかろうが、俺はお前を…心を思いっきり込めて抱いたつもりだ。今までの俺は、お前の言う"来るもの拒まず"な男だった。ひとりよがりなセックスに嫌気がさした女性たちは、みんな逃げて行ったよ。思えば、俺は自分から女性を好きになった人と、大人な関係になることなく振られてからは、適当に付き合ってきたから』

そう言うと、桐生さんはソファーから立ち上がって、窓に向かって歩いた。
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