愛されオーラに包まれて
『君、新入社員?君にはまだ無理だな。金澤さんのような人なら話は別だけど、普通の子なら20年早い話だね』

すると、金澤さんの電話が終わった。

『どうしました?本堂さん』
『いや、この企画なんだけどさ…』

ふたりの会話は私にはちんぷんかんぷんだった。

すると隣の小津さんが、

『まぁ、気にするな。金澤はヒットメーカーなんだよ』
「ヒットメーカー?」
『編集が持ち込んだ企画を売れる売れないの判断能力がピカイチなんだよ。あるいは、企画に色つけて売れる商材にしたりね。売れないと思うものはバッサリ切る。それが外部の編集プロダクションのもので、ここで金澤が切った企画を別の出版社でやって惨敗したってこともあったし』

「へぇ」
『それを知ってか知らずか、社内はもちろん、社外の他の出版社や販売会社の人たちからも引っ張りダコ。売るための営業能力も高いから、信頼されてるんだよ』
「でも、1年ですよね、ここで仕事して」
『能ある鷹は爪も隠しきれないほどの能力だったってことじゃないの?』

小津さんは私にそう言うと、カバンを持って部長に"ゼッド出版に行ってきます"と言って、外出した。
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