愛されオーラに包まれて
お盆休みが終わり、みんなの休みボケも抜けた8月下旬。

販売会社で料理書フェアの営業をしていた私は、先方の書籍仕入担当と話を終え、外に出ようとしたら、ロビーの長椅子に座り、横の壁に寄りかかっている…

泰河?
明らかに顔色悪いんだけど。

私は迷わず駆け寄った。

『遥香。いたんだ』
「泰河こそ、具合悪いんじゃない?」

額に手を添えると、とても熱い。

「ちょっと、熱あるよ!」
『大丈夫だよ…』
「あのね、全然大丈夫に見えないの」
『でも、もう会社に戻らないと』

と、立ち上がろうとしたら、フラついて再び長椅子に座ってしまった泰河。

「もう、無理だよ」

と、私は携帯を取り出して会社に電話をした。

大体、出るのは派遣社員の人。

「販売六部の高松です。えーっと、局長は居ますか?」

"会議中ですね"

「では、金澤さんは」

"お待ちください"

"はぁい、金澤です。遥香ちゃん、どうしたの?部数、上手く交渉できなかったぁ?"

「いや、料理書フェアは順調に交渉成立しています。この電話はそうじゃなくて、桐生さんのことなんですけど、熱があるみたいでここのロビーから動けなくなっていて…」

目の前の泰河、さらに悪化しているように見える。
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