愛されオーラに包まれて
◎事故発生~side HARUKA~
翌朝。
微熱の残る泰河におじやを作り置きして、私は仕事に向かった。

電車に乗ると、隣のドアに朱里がいた。
朱里とはあれから、話してない。

あの"水ぶっかけられ事件"は一部に有名で、私に同情、朱里に批判が集まった。
泰河とのことで揉めたことは、不思議と知られていない。

朱里…広告局のフロアでは、どんな仕事の仕方をしているのだろう。

風当たりが強い中、大丈夫だろうか。

私は、今後も朱里とは歩み寄れないのかも知れない。
悲しいけど、それが現実。

自分のデスクに着くと、料理書フェアに使う本に巻く帯のデザイン案が来たのでどれにしようか悩んでいた。

うーん。
すっかり煮詰まってしまった。

玲奈さんは午前中は販売会社に出掛けているから、午後になったら一緒に見てもらおう。

最終決定は来週月曜日だから、泰河に見てもらってもいいかな。
そんなことを思っている時、電話が鳴った。

朝のこの時間帯は本来一番に電話を受けてくれる派遣社員の人は出払っていることが多く、私が受けるパターンが多いので応対にもすっかり慣れた。

「はい、龍成社営業局でございます」

"あ、遥香ちゃん?おはよ。金澤です"

「玲奈さん?おはようございます」

"桐生くん、休みだよね。遠藤部長いるかな"

玲奈さん、いつになくかなり慌てた声だ。
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