退出ライン



今私は病院にいる。
もう直ぐ死ぬそうだ。

どうやら私は彼女に負けた。
偽物は私だったみたいだ。


あの日彼を殺したのは私だ。

彼を好きだったのは、私も同じだった。
だけど彼は最後まで私じゃなくて、彼女しか見てなかった。

悲しかった。

完璧に彼女になりきったのに、彼女の容姿なのに、私を見てはくれなかった。
私が彼女じゃないのをわかっていた。

最期に私を見てほしくて殺したのに、見てはくれないどころか私も死ぬ羽目になるなんて。


どこまでも彼女にはなれない、
どこまでも彼女に勝てない。

でも、それでも良かった。
私は別に、彼女が嫌いな訳じゃない。

彼女が幸せになるなら、それで良かったとも思う。


でも、最後の最後でちょっと意地悪してやろうと思ったの。

私と彼女、同じ字体でこう書いてやったの。


“◯◯を殺したのは私”
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