君が笑うまで。
prologue
高校に入って1ヶ月が経った。
誰もが自分の友達を確立していく中で、一人だけ一匹狼が居た。
名前は吉野笑〈ヨシノショウ〉。
〝笑〟って文字が入っているのに、まだ誰も笑った顔を見た事が無い。
もう何人かの女の子に告白されたみたいだけど「ごめん」の一言で皆砕け散った。
彼女は居ないみたいだけど、作ろうとはしないみたいで。
そんな彼に付いたあだ名は〝冷笑〟。
冷たくて、笑いを見せないから。
だから私だけなのかもしれない。
そのあだ名を不思議に思ったのは。
吉野笑が冷たいとはとても思えなかった。
彼はいつもイヤフォンを耳に遠くの空を見つめている。
その表情はあまりに優しくて、切なかった。
そんな表情を浮かべる彼を見て、不覚にも泣きたくなってしまった。