すきなひと。


「ごめんなー。俺そんな趣味ないんだよなー。まぁ気持ちだけ受け取っとくよ・・・名前は?」

「か・・・加藤です」

「よし覚えた。“俺のこと大好きな加藤”な」


そう言ってポンと汰希の頭に手を置いて。


「え?ちょ、・・・何これ?!」


助けを求めてくる汰希に向かってあたしは今にも笑いそうなのを押さえて言う。


「たっ汰希・・・あたし汰希のこと勘違いしとったわ・・けっ軽蔑はちょっ…とするかも・・っしらん…けどごめんね?笑」


「えぇ?!軽蔑すんなよ!!つーか何それ!!こあっおま・・・」


もー無理って笑ってると、先生と目があって。
そしてニッと笑いながらあたしに向かって手を挙げる。
つられて手を挙げたら、ハイタッチされた。


「吉純、お前最高(笑)」


そう言って笑いながら教壇に戻って行く。
あたしは先生の後ろ姿を見つめながら、ドキドキしてる胸を押さえていた。






それから授業が始まるかと思ったら、雑談会。
みんな自由に発言したり、話振ったり振られたり。
先生と汰希はノリが合うのか、めっちゃ盛り上がってた。
教壇の前まで汰希が話に行くと、周りの子も教壇へ…と、いつの間にか2人の周りには女子も男子も集まって。
あたしもその中に入れられそうになりながらも、流しつつリカと喋ってた。


でも、時折汰希は「なっ!こあ!」とか「なっ!リカちゃん!」みたいに話を振ってくる。

それに「な〜」って、2人で合わせるだけ合わしたりして。
反応が返ってきた汰希は「ほらな!」と自慢気に話を続ける。
そんなのを見て、リカはボソッと呟く。




「汰希も人気者か・・・」




リカの声はざわついた教室に吸い込まれる様に、消えていった。

それくらい小さい声だった。
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