すきなひと。
第一章

アルバム


ピピピピ・・・・
静かな部屋に電子音が鳴り響く。

「・・・・んー・・」

モゾモゾと布団から手を出して、携帯のボタンを押してチラっと時間を見る。
ディスプレイには10時8分と表示されていた。


「あー・・・やば・・」


今日は2限から。
授業は10時40分からなのに、あと30分ちょっとしかない。
半ば諦めながらゆっくりと体を起こし、跳ねた髪を触る。
いつもより激しい寝癖。
手鏡で頭を見て、一人で笑う。

ちょっとふらつきながらも、洗面所に行って顔を洗い、歯を磨き、頭を濡らし…と日課になってる作業をして。


部屋に戻り、テレビをつけて化粧を始める。
静かな部屋だったのが一気に賑やかになった。
芸人さんが面白いことしていて、笑い声が部屋中に響く。
あたしもつられて吹き出した途端、ズレたアイライン。
焦りながら綿棒で修正して、安堵のため息をもらす。


急いで、身支度をしてると携帯がなった。


「はーい」

[おはよー。お前まだ家?]

「うん」

[何かなー、2限と3限休講らしいで]

「あ、そうなん??なんやー」

[そんだけ!じゃ]

「んー。ありがとー」

[もしかしたら、あとでお前ん家行くかもやから]

「はいはい(笑)りょーかい」


用件だけで、会話は終了。

たぶん、彼は他の子にも伝えてるんだろう、そう思いながらあたしは携帯を机に置いた。

「休講か・・・今日授業ないんや」

そう呟き、カーテンを開ける。
目がクラクラするような青い空。
あたしは愛用の一眼レフを持ちベランダに出て、空を見上げた。
休講ってこと知ってればもう少し寝れたのに・・・
そんなことを思いながら、カシャっと空を撮った。
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