すきなひと。
「仲えぇな。けど」
そう言いながら近寄ってきてベシっと分厚い教科書で汰希の頭を殴った。
「いっ?!」
「クリンヒットー!!お前名前は?」
汰希は頭を擦りながら、名前を言う。
「加藤な。で、お前は?」
辻本先生はあたしを見る。
「吉純です・・・」
「吉純・・よし、覚えた」
そう言ってにやっと笑った。
でも、それは一瞬で。
次の瞬間爽やかな笑顔になってた。
授業はそのまま、止まることなく続く。
辻本先生に目をつけられた汰希は、出される問題を次々あてられ、答える羽目にあってた。
笑いながら辻本先生は汰希を見てるという、S気を見せられ、あたしは思う。
“あの人に気に入られたら一生いじめられる”と。
そんなこんなで国語が終わり、休み時間になる。
汰希は疲れたのか机にへたりこんで、動かない。
それを心配してか、女子が汰希の周りに集まり「だいじょーぶぅ??汰希くぅん」と話しかけてた。
あたしとリカはそれを見て苦笑する。
リカは女子の真似を小声でしながら、あたしを笑わせてくれた。
「あ。そーいや次英語やん」
「うわ〜最悪。うち英語出来ないし」
「ほんまそれ!!全国の共通語が日本語になればいーのに」
2人でぼやきながらうなだれた。
チラッと汰希の方を見てみると、汰希はチラチラと目で訴えてて。
あたしとリカはわざとらしく頷いてみせる。
すると、汰希は突き放されたのに気づいたのか「あ〜もーチャイムなるよー」と女子たちに伝えて。
それを聞いたあたし達は、吹き出しそうになった。
チャイムが鳴り、苦痛の英語。
なんとなく内容についていけてたからまだマシな気もするけど、リカが嘆く。
「うち無理!英語なんてむーりむーりぃ」
授業が終わったと同時にリカがあたしの机にへたりこむ。
そんなリカの頭をポンポンと叩いて、ご飯を買いに行こうと誘った。
お腹一杯になったあたしとリカの午後の授業はお昼寝タイムになったということは、秘密にしとこう。