すきなひと。


鼻唄を歌いながら、空に浮かぶ雲を見てると、ヒロが帰ってきた。



「ごめーん!!遅くなって」


「や、えぇよ・・・!」


顔をヒロの方に向けると、そこには高岡先生がいた。


「え?勉強って数学??」


「うん。今度小テストがあって、それの前に教えてもらおうと思って♪」


「そか・・・」


先生とバチっと視線が合う。
あたしはパッとそらして変に思われない素振りをしよいと、もう一度空を見上げる。
相変わらずドキドキする心臓。
2ヶ月たっても、それは変わらなかった。



「今度、吉純のクラスも小テストすっぞ」


「え?!」


思わず、顔を先生に向ける。


「だから、勉強。わかんねぇとこは教えてやっからさ」


そう言って、あたしの席の椅子を引いた。
そんなことされたら座るしかなくて、今いる席から自分の席に戻る。
先生はあたしの前の席の椅子に座って、教科書とノートを出すように言った。



色々と解んないとこを教えて貰って、それがどんどん解決していく。
距離が近くてドキドキする反面、何か楽しかった。
そして、今日の授業で全然解んなかった問題を1から教えて貰う。
チラッと先生を見てみると、すごく真剣な表情で。
ぶっちゃけ「解んねぇのかよ、こいつ」みたいな感じで、半分キレてるんじゃないかって心配だった。
真剣にやるのが当たり前なのかもしんないけど、それでもすごく嬉しくて。


「やった!解けた!!」


あたしは思わずそう言って先生を見た。


「よかったな!」


先生は頭をガシガシと撫でる。


「お前は解んねぇとこがあっても、今まで聞かなかっただろ?」


「え、うん」


「だから、つまずくことが多かっただけで、これからは俺に聞いてきな。教えてやっから」


そんなこと言われるなんて思ってなくて、あたしは恥ずかしくなった。
「うん」って言いたかったけど声が出なくて。
先生は、ははっと笑ながら


「お前は出来る子なんだからな!!」


って言って、またあたしの頭をガシガシ撫でた。
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