すきなひと。



机を運び終わったとき先生が、あたしの手を軽く引っ張った。


「え?」


「手伝ってくれた報酬(笑)」


そういって、自販機の前に立つ。


「何がいい?」


「オレンジジュース!めっちゃ好きやねん!!・・けどえぇの・・?」


「いーんだって。こんくらい。でも、内緒な?」


「ん。内緒!」


オレンジジュースが入った紙コップをあたしに渡す。


「ほい。ありがたく飲めよ〜」


「ありがたく頂戴させていただきますー」


そんなあたしの返しに先生は笑う。


「ちょ、今どっこも笑う要素なかったよ?!」


「心愛お前…っ(笑)」


「な・・・っ?!」


腹を抱えて笑う先生。
けどあたしの顔はめちゃめちゃ熱くて。
だって「心愛」って。
あたしも負けじと名前を呼ぶ。


「ゆ・・・悠平が言うからあたしが便乗すんねやんかっ」


ドキドキがとまらない。


「ははっぎこちねー(笑)」


「なっなにがよ」


「悠平って(笑)」


「うっさい!!」


相変わらず笑う先生。
それを見てあたしも笑顔が零れた。






あたしは自分の名前が嫌いだ。
変わってるし、変だし。
けど、先生に「心愛」って呼ばれて、すんなりあたしの中に入ってきたんだ。
気付き始めた自分の気持ち。
気付き始めたばかりだったのに、名前を呼ばれた瞬間、その気持ちに完全に気付いてしまった。



そう・・・先生のことが「好き」って。







「はははは!!」


「てゆか、笑いすぎだからっ」
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