すきなひと。


あたしとつっちーはダンスの構成を練りながら作っていく。
この感覚が懐かしくて、またダンスしたいって思った。


その日の練習を終えて、あたしは着替えたあと、飲み物を買いに自販機の所まで向かう。


「お?吉純」


名前を呼ばれ振り向くと、そこには悠平がいた。


「あ・・・高岡先生」


“悠平”って呼ぼうとしたけど、勇気が出なくて。


「お前、帰ったんじゃなかったの?」


「んーん。今までダンスしてたから」


「ダンス?!してんの?」


「まぁ、成り行きで(笑)」


「そっか。何飲む?」


「オレンジ・・・って、いーよ?あたし自分で」


「もー遅い。ほい」


そう言ってあたしにジュースを渡す。


「ありがと・・・」


「よし。俺は何にしよっかなー」


財布から小銭を出したとき、中から何かが落ちた。


「あ、何か落ち…」


拾おうとして、しゃがみ込んだ瞬間あたしは固まる。
そこにあったのが『指輪』だったから。
手でそれを拾い、悠平に渡す。


「は・・はい、これ」


「あ・・・あぁ。サンキュ」


指輪を渡すと、悠平はジャケットのポケットにしまって、コーヒーを買って。
あたしの心臓はこれでもかってくらい、ドキドキしてた。
そのドキドキは、『指輪』が原因。
だって指輪を持ってるってことは『結婚』してるか『彼女』がいるかの、どっちかでしょ?


ジュースを飲みながら考える。


「急にどうした?黙り込んで」

そう言われたら、答えるしかなくて。
あたしは口を開いた。
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