すきなひと。




「あの・・・」


女の子が恐る恐る口を開く。


「ん?」


「私、YUIの曲・・・」


「YUI?あ〜・・・俺、Goodbye Daysしか弾けねぇけど・・」


「はい!!それで」


「おっけー」


「たいちゃん、最初の音・・・」



汰希に音を出してもらい、それに合わせて声を出す。
合図を出すと、弾き出した。
周りの音が一切消えて、あたしとギターの音だけになる。
時折、汰希のハモリが入って。
人々は聴き入る。
あたしも目をつむりながら、一つ一つの歌詞を噛み締めながら歌って。
すごく綺麗に終わった。


静まりきった公園からは、歓声と拍手が沸き起こる。


そのあとは汰希がバンプを歌ったり・・・と、リクエストに答えていった。
5曲くらい歌い終わったあと、ストリートを終える。


聴いてた人達は「また聴きに来ます」と口々に言い、公園から出て行った。



「お疲れさん」


「汰希こそ、お疲れ!」


「なぁ、心愛・・・お前バンド入らねぇ??丁度こないだボーカル抜けてさ〜」


「えぇ?!」


「ボーカル、心愛じゃなきゃダメなんだって!!」


「そんな・・・かっ考えとくよ」




汰希の片付けの手伝いをしようとしたら、また座っとけって言われる。
あたしは大人しく座って、片付けしてるのを眺めてた。
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