すきなひと。



みんながズラズラと並んで体育館に入って行く。
あたしとリカと汰希は最後に体育館に入った。
近くにいた先生が最後なのを確認して、扉を閉める。



担任の先生達がクラスごとに整列させたあと、しばらくして始業式が始まった。




教頭の司会。
校長の長い話。
お決まりの内容。

あたしは全く聞く気がなくて、窓の外に目を向ける。
3階にある体育館からの眺めは最高で、1年の時からあたしはよく放課後の体育館で景色を見てた。
吸い込まれそうな綺麗な青空。
そんな青空からフと目線を下に落とす。
そこにはスーツを着て、煙草を吸ってる男の人がいた。

ドクンと心臓が跳ねる。

あたしは急いで目をそらし、俯いて胸を押さえて。
自分でもどうしてこんなにも心臓がバクバク言うのかわかんなかった。

もう一度その人に視線を移す。

その人はあたしの視線に気付いたのか、こっちを見て。
その瞬間あたしは金縛りにあったように目が放せなくなった。
しばらくして、その人は誰かに呼ばれたのか、その場から動き出す。



「あ・・・」


あたしは小さい声をもらす。
聞こえるはずないのに、その人を呼び止めたかった。
思わず手で口を押さえる。
声で呼び止めるんじゃなくて、あたしは心の中で「まって」と叫んだ。
その後の一瞬の出来事。
その人は、こっちを見て手をあげる。
あたしは「奇跡」だと思った。
それはあたしに対してかは定かではないけど、また心臓がドクンと跳ねた。
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