すきなひと。
けど、その「奇跡」は一瞬で砕かれる。
顔を上げて絶句。
その人が挨拶のように、手をあげた相手はうちのクラスの担任。
その事実を知り、あたしはもちろん冷めた。
“漫画みたいな恋なんか出来るわけないか”
そう心の中で思いながら式に意識を戻した。
1時間くらいして、式が終わる。
その後は教室に移動。
また1時間半HRして、そのあと大掃除。
掃除を終えたら明日の連絡事項聞いて解散。
「何か今日あっけなかったね」
リカがそう呟く。
「ほんまそれやなぁ。ねぇ、今日一緒に帰ろ〜?」
「うちこれから部活のミーティング…ごめん!」
「あ、そうなん?!始業式の日くらい休ましてくれてもえぇのになぁ…頑張って!」
「うん、ありがと!行ってくるね!!」
リカは慌ただしく教室を出て行った。
それを見送り、あたしは窓の外に目をやる。
午前中が入学式だったから、2年のあたしはお昼から始業式。
だから、空の色は青とオレンジが混ざった色をしてた。
「久しぶりに、あそこ行ってみよかな」
鞄を持ちiPodをポケットに入れて、教室を出る。
慣れたように、また体育館に向かう階段を登り始めて。
途中でイヤホンを耳につけて、iPodを再生する。
流れ出したのは、ちょっとロックな曲。
それに合わせるかのように階段を登っていく。
体育館の手前まで来たとき、誰かに引っ張られた。
「ちょ?!」
ぐっと口を押さえられて、イヤホンを取られる。
「しっ!俺だから」
その声を聞き、後ろにいるのが汰希だと気付きあたしは安心しながら、こんなことをした汰希の足を踏んだ。
「いっ?!」
痛がってるのを横目で見ながら汰希の手をどかし、イヤホンを奪って小声で話しかける。
「どしたん?」
「や、俺も今来たんだけど…とりあえずこっそり見てみ」
言われた通り、覗いてみると、体育館の中にいたのはスーツを着た男の人と、女子生徒。
「なにしてるん?」
「わかんね!見とこうぜっ」
汰希にそう言われ、一緒にこっそり見ておくことにした。