すきなひと。


「・・・まえも言ったけど、やっぱり好き」


それを聞いた瞬間、あたしと汰希は顔を見合わせた。


[告白やん!]


[うわっ初めてみた…!っつーか、誰なんだろーな?]


[わからへん…]


そんな会話を小声でしていたら、スーツを着た人が口を開く。


「だから、言ったっしょ。無理だって」


「けど!!あたしだってあの時より色々大人になったもん!!」


女子生徒の必死さが伝わり、あたしは思わず息を飲む。


「あのな、どう大人になったのか知んねぇけど、立場上無理だし俺彼女いるし」

「いたって構わないよぅ!!」


“立場上無理”の理由がわからず、汰希に聞こうとしたとき男の人はあからさまなため息をついて、冷たくいい放った。


「好きだっつって、そう簡単に叶うもんなんてない。それに自分のことだけ考えてるやつには、一生彼氏なんて出来ねー」

「・・・っ」

「そこ、だけ直しな。んで、俺以外の男好きになんな」


それを聞いたとたん、女子生徒は体育館から出ていった。
最悪な状況に、あたしは戸惑い汰希を見る。
そんなあたしとは裏腹に、汰希は目をキラキラさせながら言った。


[心愛、俺どんな子か見に行ってくる!!]


[え?!ちょっ]


汰希は全速力で走ってく。
あたしはどうすればいいのかわかんなくて、何も言わず見送るしかなかった。
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