C校舎の城ヶ崎くん
「まあ…ありがと」
「ど、ドイタシマシテ」
沈黙が流れる。
お互いが顔を逸らす。
でもなぜか空気が悪いわけじゃない。
「で、その…」
「は、はい…」
言いにくそうに、うなじの辺りを押さえている。
こ、これは…。
この仕草は知ってるぞ。
桃ちゃんが乙女ゲームで得た知識を、これでもかと語ってくれたから知ってるぞ。
この仕草は、照れてるときにやるもんだって、言ってた気がする。
城ヶ崎くんでも、仕草にそういうのがでたりするんだ…。
「あー…返事、聞いていい?」
………ん?……返事?
ワッツ?
私は先程の羞恥心を忘れ、なんのことだと頭をフル回転させる。
右手を顎に添え、たいしてシワのない脳ミソを一生懸命使う。