C校舎の城ヶ崎くん
「え…?」
「千代が城ヶ崎たちと関わりを持ってるのはもちろん知ってるけど、もしかしてその中に太郎もいるの?」
「う、うん…」
「城ヶ崎グループに?」
「いつも城ヶ崎くんと一緒にいる4人の中の1人だよ」
城ヶ崎くんの名前を聞いて、なぜかドキッとした。いや、ギクッとした。
最近、本当に胸の辺りがおかしい。
「えっと、桃ちゃんはキタロと知り合いなの?」
「…きたろ?」
「た、太郎くんのあだ名だよ…」
いつにも増して桃ちゃんの目が怖い。
ジリジリと迫ってくるような、逃がさないとでもいうその気迫。城ヶ崎くんに負けず劣らずだ。
さっき謝っていた桃ちゃんだけど、今度は怒ってる…?
「千代は…」
「…?」
「私の知らない太郎を知ってるんだね」
どういう意味が込められているのかは、さっぱりだ。
けど、桃ちゃんが悲しんでることはその潤んだ目を見れば一目瞭然だった。
一瞬にして鋭い目付きが下がっていった。
その様子に、私は焦る。
「も、桃ちゃん!?」
「なんでもない…なんでもないっ」
目元をゴシゴシと拭う桃ちゃんは、なんでもなくなかった。
何もできなかったので、取り敢えずティッシュを渡す。