C校舎の城ヶ崎くん
「それ」
「ど、どれ?」
「その顔。恋する乙女じゃん」
「…違うもん」
ぷい、と顔を背けた私にため息を吐いた桃ちゃん。
だって違うもん。
城ヶ崎くんに恋なんてそんな…。
「意地ばっかり張ってると、他の女にとられるよ?」
「え…」
「そのうち彼女ができたりしてね」
「そ、れは…」
彼女。
その単語は思わず高梨先生を連想してしまう。
城ヶ崎くんは否定したけど、思い出す度にチクっと胸が痛む。
でも前より痛くなかった。
「千代、恋っていうのはね。相手が他の女と楽しそうにしてると胸が痛くなったりするの」
「…胸が、痛く」
「あとは、笑顔とかキュンとくる」
「…笑顔」
「そんで、他の男よりキラキラしてる」
「…キラキラ」
桃ちゃんの言葉を繰り返すように、自分でも呟いてみる。
それらは、城ヶ崎くんに対して抱いていた私の気持ちそのものだった。