C校舎の城ヶ崎くん
一昨日の土曜日、桃ちゃんは私の家に泊まり恋バナ満載だった。
「あ、千代おはよう…」
「桃ちゃんおはよ」
教室には桃ちゃんが既に登校していた。
しかしその顔は疲れ果てている。
目の下には隈ができて、昨日は寝れなかった様子だ。
「千代…」
「なに?」
「や、やっぱり告白やめようか」
「……桃ちゃん」
とてもゲッソリとして言う桃ちゃんに、一昨日の迫力の欠片もなかった。
桃ちゃんは優柔不断ではなく、どちらかというと即決して即行動のタイプ。
一晩でなにがあったんだろう。
「やっぱり無理…わたしは無理…」
「も、桃ちゃんたら。自分で言ったのに」
はあ、とため息を吐きながら席に着く桃ちゃんはドヨンとした重い空気が背後に漂っている。
外は雨が降っていて、桃ちゃんが天候を操っているのでは?となんとなく思った。
「なにかあったの?」
私も席に着きながら尋ねる。
桃ちゃんは一度C校舎をチラ見し、再びため息を吐いた。
「太郎、好きな人がいるんだってさ」