C校舎の城ヶ崎くん
6組
校内中に響く、チャイムの音。
それを合図に生徒は教室から飛び出して行った。
しかし私は椅子に座ったまま、深呼吸をする。
もうすぐ夏だというのに、湿気で鬱陶しい室内にいるのは私だけになっていた。
「あ、千代」
「桃ちゃん!」
教室を出ていったはずの桃ちゃんがひょこっと室内に顔を出した。
まさか、桃ちゃん!
あんなこと言っても、やっぱり私のことを心配してくれて……。
なんて淡い期待を持ったが、それは見事に打ち砕かれた。
「はやく筆箱探しなよ。じゃ、私部活あるから」
それだけ残してパタパタとシューズの音を立てながら行ってしまった。