C校舎の城ヶ崎くん
私は入っていいのか分からず、扉の前で立ち尽くす。
「誰?」
「……えっ」
城ヶ崎くんが誰もいない教室で声を漏らした。私に言ってるのかな、もしかして気づいてるの?
ほんの少し開けた扉から城ヶ崎くんを見てみると、こっちを向いていて目が合った。
その真っ直ぐな瞳に、どきりとした。
「さっきからずっとそこにいたけど、何?」
「うぁっ……え、えと」
バレてしまったのだから仕方がない。
ここは大人しく入ろう。
ガララ、と音を立ててゆっくり扉を開け、「失礼します…」と小さく呟いた。
さすが不良しかいない教室。
荒れた跡が結構目立つ。
壁や床がところどころ剥がれており、机はひっくり返っているものがいくつかある。
「なんか用?」
6組に入ったときにも同じことを言われたな。
デジャヴというやつだ。
さっきの不良たちと話していたときよりも緊張するのは、その整っている顔のせいか。オーラのせいか。
それとも城ヶ崎龍という人間だからか。