C校舎の城ヶ崎くん
「珍しいね、千代が自分から発言なんて」

「発言じゃないよ…」




1時間目は理科で移動教室なので、教科書を持ってC校舎へ行く。



だ、大丈夫かな…。

文句言われたりしないかな。睨まれたりしないかな。




「千代?」

「うぅ、お腹痛くなってきたかもしれない」

「かもしれないって、なにそれ」




あははと笑い飛ばす桃ちゃんだけど、笑いごとじゃないよ本当に。



お腹辺りに手を当てて俯く。



短く切り揃えている髪がさらっと落ちてきた。





「まあまあ、C校舎にはイケメンがたくさんいるから。目の保養にもなるよ」

「目の保養って…」

「好きな人いないんでしょ?ならC校舎の男子狙うといいよ。顔は良いから。あとオシャレだし」





と言いながら手鏡で前髪をチェックしている桃ちゃん。




「好きとか、よく分からない」




まだ中学2年生だし、そういうのはまだ早いと思う。



私は落ちてきた髪を耳にかけながら呟いた。

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