桜ノ君


"ほら、桜咲いてるで。"



良い天気ばかりだった去年、綺麗に咲いた桜はあたし達の幸せがそのまま現れたみたいやった。


もうだいぶ散ってもた桜を見上げて考えていると、思っていたより前を歩いていたあなたが止まる。


"…はじめまして。"


さっきのあたしと同じように桜を見上げるその姿は、初めて会った時みたいに少し切なくて。



頭に響く声

照れてあまり真っ直ぐに見つめてくれへん瞳が、今桜に夢中になってるんが悲しくて。

名前を呼ぼうとした声が喉に張り付いて離れない。

せめて振り向いてや、謝るきっかけさえくれへんのはもう愛想が尽きたから?

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