タイトル


窓を閉めた彼の背中しか
私には見えなかった。



また、
空気が重くなっていることに気づく。






「あっ、あのさっ

傘、覚えてる?」





私は
話題を変えようとした。

神影くんは振り返った。



「あぁ」と聞き流して…。





「今でも持ってる?」






静かになった。

彼は
ピアノを片付けようと動いている。

その音だけが
妙にうるさかった。









「…もう、ない。」









…。












片付けようとしているその手が
動きをやめる。


「…なにか、弾こうか?」







笑えていない顔を
多分無理やりにでも笑顔にしていた。

…出来ていないけど(笑)





「えっと、じゃあAKB48!!!」


「…曲わからないから、
少し歌ってみて。」







残念ながら
ぶりっ子な私は歌える曲が限られていた。

できるだけ、
カラオケの時に可愛く見える曲。







私はサビだけ歌った。

それを
神影くんがピアノで弾く。



他の曲も。

次の曲も。






会話はなかったけど、
話しているみたいに楽しかった。







「…渡邉さん」


私は座る神影くんの顔を
自分の顔を下に向けて見た。







火照る。

顔がドンドン熱をおびる。





なにかが

爆発した。









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