もう一度、最初から
「全てが終わってから、報告してきて」

エノキの声が少し震えている。

「全部……一人で抱え込ませちゃったんだな、と、思ったら申し訳なくて」

あたしも、声が出ない。

「元々、大嫌いで別れたとかでもないし、何て言うか……」

「責任?」

自分でもびっくりするくらい、冷静に言葉を発してしまった。

「うん、近いかもしれない。それだけだと冷たいけど……」

聞くのが辛い。

「一度でも、一瞬でも、柚希の中に俺の子がいたんだなと思うといとおしくも感じて」

ほら、辛い。

「もう一度やり直そうっていって、いつかまたちゃんとその子を二人で迎え入れようって誓ったんだ」

……声が、出ないよ。

ちょっと前まで浮かれてた自分がバカみたい。


何が、普通のデートだよ。
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