もう一度、最初から
「俺達、別れたんだよ」

「……へ?」

「朱里さんが10年ぶりに目の前に現れて、最初は単純に懐かしくて嬉しかった」

エノキが、車をゆっくりと走らせる。

「朱里さんが俺の事覚えてたのも、嘘みたいで。あ、憧れっていうか、好きだったから」

車は病院の隣のコンビニに停まる。

「朱里さんてさー、派手な格好してたのに、意外と中身地味だったでしょ?」

「……な、なんのこと?」

「家庭科の、おばあちゃん先生」

「……誰それ」

「俺も、名前はわかんないけど。その先生が凄い荷物抱えて階段登ってて、他の奴等は全然スルーなんだけど、朱里さんが通ってさ」


……そんなシチュエーション……あった…かも?


「その荷物、当然って感じで持ってあげてて。スカート短いから、パンツ丸見えだったけど」

「いや見せパン履いてたし」

「なんでもいーんだよ、スカートから見えりゃ……で、とにかく、それ見て以来、なんかもう、好きで」

「なんか変態発言挟んでますけど」
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