もう一度、最初から
「でもまぁ。それが、結果的によくなかったんだよね」

エノキの顔が曇る。

「柚希の中には、変なルールがあったんだろうね」

「ルール?」

「自分が、俺を変えたから。後から出てきた奴には渡さないっていう」

「早い者勝ち的な?」

「そう。柚希にとっては、唯一の勝てない相手が、昔を知る朱里さん」

「……付き合ってたんならともかく、あたしら何の接点もなかったのに」

「俺は、もう会うこともないだろうと思ってたし、柚希と生きてくって決めてたから、余裕で何回も朱里さんの話してたからね」

「そしたら、偶然あたしが……」

「そうだね。でも、俺の中では完全に朱里さんは『想い出の人』であって、何の心配もないはずだったんだけど」

ちらりと病院の方を見る。
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