もう一度、最初から
「この手で、朱里さんを抱き締めたいと、思った……」

エノキが自分の両手を見つめている。

「で、帰ってから、柚希に別れ話をしたんだ」

「……」

「決意をわかってもらうために、家を出た」

「……」

「職場にも押し掛けてきて、大変だった。朱里さんがいなくてよかったと思った」

……千波ちゃんの言ってたやつか。

「どれだけ時間がかかっても、無理なものは無理だから、別れようと思った。前とは違って、何となくじゃなくて、本当に好きな人が出来てしまったから」


……ドキドキする。言葉の一つ一つを大切に取っておきたいよ。


「他に好きな人がいる奴といても、柚希だって幸せじゃないだろうし」

「……」

「でも。予想より早く、別れることが出来たんだ」

「揉めずに?」

< 147 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop