もう一度、最初から
「そー言えばさー、エノキいるじゃない?」

急に名前が出てドキッとする。

「ん……うん」

飲みかけていた杏サワーがこぼれたふりをして口元をお手拭きで拭う。

「あの人さー、過保護ね!でもかっこよくなっててびっくり。そういや、昔、すっかりあか抜けちゃって、大学デビューの典型だ、とか同窓会で言われてた気もする、今思い出したけど」

「か、過保護……??」

「あ、守秘義務あるし、ここだけの話ね」

酔っぱらっているせいか守秘義務を守るつもりはないらしく、小声にはしたものの、話を続けようとする。

「彼女がさ、健診で泊まったくらいでさ、普通血相変えてお見舞いに来るー?!」

「……健診…?」

「確かにねー、あれだけかわいい彼女なら、心配になるのも分からなくもないけど」
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