もう一度、最初から
にこにこ、ふわふわ、かわいくて幸せそうな、柚希さん。

……だけど。

「さっきの男の人、誰ですか?」

「……え?」

柔らかい表情が一瞬固まる。

「ここで、さっきまで、柚希さんと、お茶をしていた、人です」

ゆっくりと、確実に伝える。

「……あー、さっき、偶然従兄弟のお兄ちゃんに会って」

「従兄弟のお兄さんと公衆の面前で腕を絡ませるんですか?偶然、待ち合わせるんですか?」

本当はそんなシーン見ていないのだけれど、思わずかまをかけてしまう。

でも、腕を絡ませるどころか、今すぐにキスでもしそうな雰囲気だったから。


「……見てたの?」

柚希さんの、声のトーンが変わる。

「あたし、一時間前に来たんで」

既に柚希さんは『来たばっかり』なんて嘘をついていたけれど、それをいちいち指摘するのも嫌なので、わかってもらおうとわざわざ言ってみた。

「そっか」

思ったより素っ気なく言い放つ。
< 171 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop