もう一度、最初から
「この辺田舎だからさー、まともな働き口、ないよ?」

背中に降り注ぐ、エノキの声。

「…そ、そりゃー、高望みをするつもりはないけど…」

薄々分かっていたけど、ばしっと言葉で聞くと堪える。

「業界でも有数の、今ぐんぐんきてるヤギ製菓と同じだけのお給料や待遇を望めるなんて、正規職員でも、ほぼ皆無だと思うよ」

「いや、そんなん、無理だってわかってるけど…」

「ここら辺、新卒の子だって働き口なくて困ってんのに、28歳なんて中途半端な女の人、難しいと思う」

「…なんか、エノキ、そんなキャラだった?優しさ微塵も感じないんだけど」

「いやー、元々はわかんないけど、朱里さんと机を並べていた頃から10年も経っているからね…それなりに変化はしているかも」


うう。

そうね。10年は、人を変えるには十分な年月よね。
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