もう一度、最初から
バックヤードに入るドア…つまり、お店の関係者だけが出入りするところに、人が立っている。

あたしとの距離、近い。手を伸ばせば届きそうな…。

「あっ…えっ…と、い、いらっしゃいませ…」

いつ、入ってきたんだろう?

全然入店メロディに、気がつかなかった…。

随分身体の大きな男の人で、まるで通路を塞いでいるみたい。

ふと、今店内にはあたし達しかいないことに気がついて、ぞっとする。

「あ、あの…」

何も喋らない。


ふー、ふー、という荒い息づかいだけが妙に大きく響く。

店内の方では、有線で、ポップな曲が流れている。

でも、誰もいない。
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