もう一度、最初から

*****

「いたぁぁあい!」

病院の帰り、あたしはエノキの車の助手席で腕を押さえて悶えていた。

「ねーここの針異常に太くない?」

「朱里さんが痩せすぎなんですよ」

「………エノキダケに言われたくありませんけど…て言うかなんで敬語?」

「店長なんで」

「……今更何それ」


精密検査の結果、どこにも異常はなく、元々の貧血の酷さを指摘され、二時間点滴をしてきた。

何度も、帰っていいと言ったのに、エノキはしっかり待っていて。

安心すると同時に物凄く寂しくなる。

怖かった、と抱きついてしまいたい衝動にかられた自分がいたから。

そして、エノキには守るべき相手がいて。

あたしの立ち位置が、わかっているから……。
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