不稔華
深海の暗闇
私が貴方の前から消えてしまった時。
私は無理矢理貴方を思い出にしようとしたの。
でも、それは間違いだった。
だって、貴方がとても、とても悲しそうに私を見ていたから。
私が幸せでないことを見透かされている様だった。





私、時々夜に独りで泣いてたの。
訳なんか分からなかった。
ただ、ただ、涙が溢れて止まらなかった。
きっと貴方もその頃どこかで泣いていたんだね。
今なら分かる。




私どんなに辛くても、あの頃の写真をソッと眺めては頑張れた。
きっと大丈夫。
きっと大丈夫。
呪文の様に繰り返し、頑張ってた。




貴方の電話番号が頭からずっと離れなかったの。
普通なら忘れてしまう記憶が、昨日のことの様に直ぐに出てくるの。
貴方だけは私の記憶の箱から出ていってしまうことは無かった。
まるでパンドラの箱に残った希望の様に。
貴方は私の希望だった。




約束何て何もしてない。
なのに
きっと何時か貴方に会えると何処かで
思いながら…………。




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