不稔華
貴方から電話があった。
彼女が消えたと電話があった。
貴方が私に頼み事をしたのは初めてだったね。
私達は夜の街を彼女を探してさ迷った。





彼女が泣いた。
貴方の心が分からないと泣いた。
私は彼女に言った。
貴方の心は何時でも彼女だけ。と…。
彼女が私に聞いた。
好きなの?と聞いた。
私は何と答えれば良いのか分からなかった。
貴方と私は恋愛と一言では言えないものだったから。





お互い意識していても
どうしようもない事ってある。
それに貴方と私の間にあるのは
男女の恋愛とは何かが違っていた。
十代の私達にはそれを何と言うのか
分からなかった。





求める訳でもない
離れる訳でもない
でも、心の底に何時も貴方が居た。
忘れた事は無かった。
心の底で貴方を思っていた。
貴方の幸せを願っていた。





私では貴方を幸せには出来ない事
私は知ってたよ。
だからせめて貴方の幸せそうな笑顔を
浮かべている姿を想像していたよ。
貴方も私と同じ路を歩んでいたことなど知らずに。





貴方の住んでる街を電車の窓から見たの。
私ちゃんと貴方の住む方向を無意識に観ていたみたい。
ホントはずっと貴方を感じていたの。
どんなときも感じていたの。
貴方はただ、私を見ていた。
悲しそうに、心配そうに…。
あれは幻影じゃなかったんだね。













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