冷凍保存愛

「へえ。蝶とか採るんだ」

「おう」

「僕もね、蝶は好きだよ。標本にして飾ったりしてた」

「標本? そんなもん自分で作れんのかよ」

「簡単だよ。まず蝶を捕まえたらすぐに殺すんだけど、その時はまず羽を背中合わせになるように持ってね、それから胸のところを…」

「いや、いいや。それ以上言うな。俺はあくまで採るのが趣味でそのあとは逃がすんだからよ」

「なんだ。そうなのか。珍しい蝶々を捕まえたときにはぜひ連絡してほしいものだね」

「その時は連絡するわ」心の中だけでな。と、付け加えた。

 強羅にとっての蝶は見ているものであって、殺して自分の手元に置いておこうという気持ちは一切なかった。

 そもそも、どんな小さな動植物にも命はあるんだからそれを自らの手で止めてしまうのはいけないことだと子供の頃から教わってきた。

 命が燃え尽きるその時まで自ら生き延びることが生命を与えられたものたちの使命だと強羅は思っていた。


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