冷凍保存愛
「なんで鍵?」
「鍵がなかったらどうやって入るの? 窓割れってか?」
小声で離す二人以外誰も来ないと分ると、道子は今度は一瞬にして鍵を開け、するりと校舎の中へ入り込んだ。
こんなもん簡単につくれるのよ。新聞部なめちゃだめよ。と理不尽な言い訳に、新聞部がこんなことしてたらこれこそニュースになっちゃうじゃん! と詰め寄る。
「あんたもいちいち優等生だね。情報を掴むためには多少のことには目をつぶるものなの」
優等生、真面目な羽都音にとってはコーヅといい道子といい、やってることがドキドキすることで耐えられなかった。そしてそこに加わっている自分にもなんともいえないモヤモヤが心の中に広がっていた。
「よし、小田原先生の机を探して」
「なんで小田原先生」
「携帯の番号が必要なの」
「携帯? 先生自宅にいないの?」
「なぜかつかまんないの。さ、お目当ての番号さえ入ればさっさとずらかれるんだから、あんたも手伝いな」
「どこか行ってるんじゃない? 夏休みだしさ」
「だとしたらなおさら携帯の番号が欲しい」
「でもなんで知ってるんだってならない?」
「そこのところはおさえてある」
「……どうやって?」
「秘密。ほら、行くよ」
「はい」