冷凍保存愛
「羽都音―?」
教室の前のドアから明るい声が聞こえ、クラス全員の目が声の主の方へ向いた。
そこには茶髪のショートカットに浅黒く日焼けをした小柄で活発そうな女子が一人、日の光を遮りように額に右手を当てて「あれー?」と言いながら教室内を見渡していた。
「だれか探してるんですか?」
かわいいグループ4人衆の一人、このグループのリーダー格っぽい女子、浅香夜(あさかよる)がとびきりの笑顔を見せてクラスの静けさを遮った。
「うん、真鶴羽都音って子、確かこのクラスだったんだけど、まだ来てないですかね」
「んー……そうですね、だれも返事しないので、まだみたい」
ぐるっとクラスを見回すついでにクラス全体を把握し、声をかけた。
「オッケ、分かりました。ありがとう」
手をひらりと降るとにっこり笑って教室を後にした。
負けず劣らずかわいい笑顔に男子はおもわず「おお」と声を漏らしたが、
『あのリボンの色、特進だろ? 相手にしてもらえなそうだな』というため息も混ざって聞こえた。