冷凍保存愛

 素早く校長室のドアを開け、体を半分に折り、机の間をすり抜けた。

 羽都音は小田原のデスクの後ろ、壁のところに背中をつけて動けなくなっていた。

「羽都音!」

 道子の声に羽都音がほっとした時、職員室のドアが開かれる音がした。

「早くこっちに」


「無理、怖くて動けない」

「ここで捕まって退学になるのと、今なんとか私のところに来るの、どっちがいい」


 退学と聞いて羽都音は泣きそうな顔をしながらなんとか四つん這いになり、道子のところに向かう。


「こっち」


 道子が羽都音を校長室へ誘導する。


 いつもだったら一言もんくを言う羽都音だが、今はそんなことをしている場合ではない。言う通りに校長室の中に入り、道子はすかさず鍵をかけた。


 震える体を引きずり四つん這いで這う。

 後ろでは職員室に駆け込んでくる音が響いている。




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