冷凍保存愛
この高校には特別進学コースと普通コースのふたつのコースが儲けられている。
女子はリボン、男子はネクタイの色で分けられ、進学コースはブルー、普通コースは赤となっていた。
教室の場所も授業時間も異なるので、高校内に二つの学校があるとも言える。
先ほどの女子は山際道子(やまぎわみちこ)、羽都音の幼馴染でもあり、大親友でもある。
ラインも既読にならず、電話をしてもつながらないので教室まで探しに来たわけだが、当の本人は今ごろ熱にうなされ夢の中だろう。
道子はきょろきょろと回りを見渡しながらスマホを手に持ち自分のクラスへと戻っていくところだった。
そろそろ入学式が始まる時間だ。
アナウンスが流れると皆一様にミラーで顔をチェックし、身だしなみを整えて体育館へ向うために教室を後にした。
生徒たちが話しながら体育館へ向かうその声が小さくなるころ、一人、男が教室に入ってきた。
その男は机と椅子を教室の一番奥、窓際のところに置くと、ネクタイを直し、額の汗を拭い、足早に教室を出て体育館へと走った。