冷凍保存愛

 中でも家の前で昔のスカイラインの横に立ち、ピースをしながら二人で同じように笑っている写真を見て、昔の記憶が蘇ってきた。

「これって確か強羅が引っ越すときのだ。ここで最後に写真撮った」


『お嫁さんにもらうから! 絶対帰ってくるから』


「ああ、そんなこと言ってたなあ。おかしい。でも私今の今まで全部忘れてた」

 だから、薄情薄情って言うのかもしれない。

 くすりと笑った羽都音は次のページをめくる。

 そこには河原で遊ぶ二人の写真と、お互いの家族が移っている集合写真。

 フラッシュバック。

 昔にぐいっと引き込まれ、懐かしさに心があったかくなっていたが、電話が鳴る音で現実に引き戻された。




「はい。あ、どうもです。はい、え? 今から? はあ、大丈夫ですけど。でもどうしようかの。あ、そうなんですね、じゃ、分かりました。はい、これから伺います」



 電話を切ったあと、羽都音はしばらく考えたが、

 強羅にラインを送ってでかける準備をした。

 すぐに帰ってくる。だからいっか。

 その時の羽都音は呑気にそんなことを思っていた。


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