冷凍保存愛

 小田原は小堺を『使える』と思った。

 自分の研究を続けていく中でこいつは役に立つ。ハメて、使えなくなったら捨てればいい。そう考えていた。


 俺の研究は人を未来に生かすことだ。

 と小田原は移動中の車の中で小堺に向けて言った。

 小田原にとって小堺くらいの生徒を丸め込むことなんてたやすいものだった。

 自分を崇拝の対象として認識させればいいだけだ。簡単だ。


 小堺は自分に自信がない。

 ここへ来る前の学校でいじめにでもあったのだろう。

 転校の理由は詳しくは書かれていなかったが、生徒の様子が書かれている記録には『○○から転校』と記載されていた。

 こいつもまた学校では一人ぼっちだ。

 友達は誰もいない。

 誰かと一緒にいるところを見たことが無かった。


 教師に気に入られている。俺は特別だ。
 そう思わせることにより自分のことを信頼し、特別視してくることも分かっていた。

 車の中で小田原はいつもの優しい笑み、安心できる雰囲気を作り、小堺の緊張をゆっくりとほどいて行った。


 車が向かった先は学校からほど近い住宅街にある高い塀で囲われた一軒家だ。

 車の中にあるリモコンで門を開け、玄関に繋がっている長い道をゆっくりと走る。

 左右には綺麗に手入れをされた庭。正面には立派な家が構えている。


「いいか、これは俺とおまえの二人の秘密だ」

「秘密」

「そうだ」


 話しているうちに車は駐車場に入り、後に続いて小堺も降りた。

 背の高い小田原の後ろを見ながら歩いている小堺は自分がこれからなんの手伝いをさせられるのか、心配で仕方なかった。

 自分にできることがあるんだろうか。そう自問自答していた。

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