冷凍保存愛

 そんなことが何日か続いた。

 小田原の家に行き、食事をする。時には妹も交えて家族で食事をしたりもした。

 小堺の警戒心もその頃にはもう無くなり、その間にすこしずつ小田原の研究のことも聞いた。


 未来に生かすということをどうやってやるのかは教えてくれなかったが奥さんも娘のそれを崇めるかのような態度で、

 だんだんと知らぬうちに小堺も、

『先生はすごい研究をしている。でもまだ自分にはその知識を得るための頭がない。だからアシスタントとしてフォローしなきゃいけない』という気持ちが芽生え始めていた。

 小田原が小堺に与えた仕事は、『クラスの男女の行動、将来の夢、それから彼氏彼女がいるのかいないのか』これを調べろということのみだ。

 それから山際と一緒にいる真鶴羽都音のことについても同時に調べろ。とも付け加えた。

 小堺はその日からクラスの男女の行動を観察し、休み時間や昼休み、放課後に話をしている内容を事細かにノートした。



 道子が自分のノートが消えていることを見つけ、真っ先に疑いの目を向けたのは小堺だった。

 小堺に面と向かっては言わないが、眉間にしわを寄せながら何日か小堺の態度をマークした。

「絶対犯人見つけるからね私。だいたい分かってる。絶対尻尾掴む」

 小堺に視線を向けたままクラス全体に響くように言った。

 小堺は下を向いて本を読んでいて、道子が自分の方に向けて言っているのを感じてはいたが、あえて無視した。

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